浦戸諸島の渡船(西部、野々島桟橋~石浜桟橋)

日本には離島や架橋が困難で道路が建設できないが、水面を横断するルートが道路として登録されている場所があり、大半はフェリーや客船などの通常の旅客航路を道路代わりとしているところが多いが、中には道路の代わりとして設置され、随時運航、もしくは頻発運航し、無料か数百円で利用できる航路が存在している。そんな渡し船を訪問してみた。

リアス式海岸が続く南三陸の南端である松島湾に浮かぶ浦戸諸島。日本三景でもある松島に含まれる島の一角で、朴島、寒風沢島、野々島、桂島の有人島と十数の無人島からなる島々だ。松島の一角なので、読者の中には松島めぐり遊覧船などで目にしたことがある方もいるだろう。その浦戸諸島には道路の代わりとして無料の渡し船が2航路運航されているとのことで、そのうちの一つを訪問してみた(2021年秋)。

訪問から半年後のレポ公開となったが、ちょうど訪問後すぐに入った冬期運休が明けたタイミングなので、紹介しようと思う。

前回最後に降りた野々島学校下渡船場から、島の中央を横断する島のメインルートを15分ほど歩くと、早くも島の玄関口、野々島桟橋に到着する。

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訪問したときは、朴島から渡船を乗り継いできたため、野々島桟橋に到着したときには、日の短い東北の秋の16時前で、すでに日が傾いていた。野々島桟橋は、診療所や行政機関が集まる中心地のような場所にあるためか、浦戸諸島の港の中でも広々としたスペースがある。

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野々島桟橋の前にある浦戸諸島総合開発センター。渡船は市営のためか、ここの渡し守の詰め所はここにあるらしく、渡船を呼ぶとこの中から渡し守の方が現れた。行政施設以外にも、観光客向けにうらとラウンジ菜の花という休憩所も設置されている。

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港の周辺にはまばらながら住宅街が広がっている。

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これまで辿ってきた朴島や寒風沢島と比べると、伝言板や観光案内や時刻表も設置され、郵便バイクや宅配便のコンテナが並んでいる規模の大きな港だ。今回の渡船は、前回紹介したルートと異なり、完全に塩釜市営汽船と並走しており、学校下渡船場のような専用の桟橋は存在せず、すべての渡船場は塩釜市営汽船および貨客船なのはな丸の寄港する桟橋と併用になっている。

左に今から利用する渡船が見える。ここから対岸の石浜桟橋までを結んでいる。

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こちらは直接比較的規模の大きい集落同士を結んでいて、朴島~寒風沢島~野々島学校下間の渡船よりも大型の船が使用されていた。船内は3~4人掛けのロングシートが4つ設置されていてかなり広々としている。定員も十名程度は乗れそうだ。また、ストーブも設置されていて晩秋の寒さでも快適に海を渡ることができそうだ。

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塩釜市営汽船も野々島~石浜間で同じルートを通り、島めぐり観光船でも観光案内がある石浜水道を通過するが、渡船のほうが小型船で海面からも近い視点で景色を楽しめるので、市営汽船や観光船と一味違った迫力を味わえる。

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3分ほどで石浜桟橋に到着する。こちらも野々島桟橋ほどの大きさではないが、設備が整った桟橋だ。

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しばらくすると、渡船は野々島へ帰っていく。普段は野々島桟橋で待機している。

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石浜桟橋の周辺の様子。ここ桂島は石浜と桂島の二つの集落があり、住宅街の規模も浦戸諸島の中では一番大きい。海水浴場などの観光施設や民宿も多くあり、郵便局も設置されている。学校や診療所など行政施設が多い野々島と比較して、こちらは住宅の島のようになっている。

今回紹介した、浦戸諸島の渡船の様子、いかがだっただろうか?前回から通しで朴島、寒風沢島、野々島、桂島とすべての有人島を回ってきたが、東北地方は日の入りが早く、17時過ぎの市営汽船の発着する桂島桟橋まで行く途中で日没となり、桂島は駆け足での散策となってしまった。なので、日が長い夏場の散策がおすすめだ。

紹介した渡し舟はすべて無料なので、観光のメインルートとは違った、松島の島めぐりをしてみたいという方は、浦戸諸島をまわってみると、観光ルートとはまた違った普段着の松島湾の様子を見ることができて面白いだろう。

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